鏤? Diary Forja-Artistica

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January.11 2011

≪金属に問う≫禁断の地球(ほし)

あの箱の中で鑑賞してくださった、

乳飲み子を抱っこしたお母様の赤ちゃんへの一言が忘れられない。

「〇〇君、嬉しいね、嬉しいね。あなたはこんな小さなころから、こんな素晴らしい物を見れて。」

なんだ!? この味わったことのない重さは。CIMG9969.JPG

お母さんの様子、口調からは微塵のお世辞もなく。

お母さん本人の感動と、さらに育ちゆく 最愛の存在に対するその言葉。

芸術なんて人類の進化に役立つのか?という愚問を払拭する、その言葉。

必至で過ごした2週間の最大のご褒美だったけど、

嬉しかったけど、重い重い賛辞だった。

「そこまで言っていただける程か?

私は芸術と言える程の 高みに達しているだろうか?」と自問自答が再発。

褒められても、けなされても付きまとう問題だろう。

お母様にとっては何気ない一言だったんだろうけどね。

8階奥の、ちょっと照明をおとした場所に、

箱と、隣は里恵さんの大物<フラスコの夢>。この二つ かなりいいコンビ。DSCN4723.JPG

箱は大人が二人ちょうど入れるサイズ。

天井が190センチ弱だから、 背の高い男性には低く感じるはず。

中にあるのはDSCN4717.JPGこれだけ。

光源となる懐中電灯と、宙に浮くように配したダマスカス球。

入った人は題名を見なくても「地球ですね」とか「宇宙ですね」という。

そう ≪禁断の地球(ほし)≫DSCN4653.JPG直径13センチ重さ3,2キロの小さな小さな地球。

地球を取り巻く宇宙である箱は、 中に入ると、大きく感じる。

遮断された光と、黒く塗られたべニアによって視覚は壁を認識しなくなるのね。

手に届くところにある壁が、遥か遠く続く闇に変化する。

これは、私自身やってみて初めて理解した現象だけど。

3,2キロの小さな小さな地球。

小さいけど無垢のダマスカス鋼としてはかなりハード。鉄とニッケルが3千枚重なっている。

球体でなければもっといデカイの作れるけど、球体にすると目減りする。

CA3C0167.JPGこれが制作風景。

この時点では6キロある。

まず、火が強すぎて、炉の周りではマスク無しでは呼吸すらできない。

挙げればきりないくらいハードな仕事。

助手が居たら楽だろうけど、いくら積んだらこの命がけな仕事を

手伝ってもらえるのだろう?と思ってしまう。

なぜ、この過酷な制作を選ぶのかと言えば、

先程のお母さんと子供の話にも通じてくるが

私は≪芸術・美術≫というものに、冷ややかな面がある。

「何かを訴えようとして作ってどれほど伝わるか?」

それが大きな問題なのだ。

しかし、自然は美しいばかりでなく、心を打ち、癒やす。

それはきっと必然から生まれる物だからだろう。

私は自然からインスピレーションを受けるだけではなく

自然そのものになりたい...

CA3C0179.JPGそして選んだのがダマスカス。

私はダマスカスに熱(火)と圧力(叩く)という環境を与える。

それにダマスカスがどう応えてくれるか?

その応えにどう対処するか。

そのせめぎ合いが形になり、 模様を生みだす。

自然も風が吹くから木が曲がり、

木が曲がるから根が伸びるでしょ。

その生き抜くための形が心を打つでしょ。

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