あくまでもハナじゃなくナナが悪いんだけどね。エアハンマーのハナの電源を入れると
「いいね~いいよ♪」
背後からの その声はなんとも言えない喜びがにじみ出ていた。
振り向かずとも その声の主の 表情と気持ちが想像できた。
それは 一生懸命作ったダマスカスジュエリーを
数年後に お客様が身につけているのを 見せてもらった時の
私と同じ口調だったから (^w^)
声の主は ハナの調子を見に来てくださった
大谷機械製作所の エアハンマー スペシャリストのH氏。
Hさんの「いいね~いいよ」 の中には製造したエアハンマーに対するプライドと自信、
数十年ぶりに再会した 自社機械に対する自負が 含まれているようだった。
そしてそれは 大谷機械製作所 の誇りの現れなのだろう。
2月16日、木曜日夕方から 欄間(ヘッド・ハンマー部分) の返りが悪くなって
日曜日には 症状がずっと続いた。
この状況は更に悪化するのだろうか?
ハナよ!!展示会を 乗り切ってから にしてくれぬか!?
もう少し後なら きちんと君に向き合えるのに。 焦りだけがつのる。
部品交換なら、特注かな。 日にちかかりそうだな~。
カツカツな状況下で 私のすべきことは
自分で分解して 時間をかけて チンプンカンプンになることではない。
最短で ハナを復活させるべきだ。
私は一番最後に使おうと思っていた 切り札に手を伸ばした。
切り札。 それはハナ自身が 運んできた。
ハナはミラクルパワーを持ってる☆ 神社でもらった五円玉よりもご縁をもたらす。
話はさかのぼって、3カ月程前
「大谷機製作所、エアハンマーで検索したら あなたの作品に出会いました。」
というメールが K製鋼の木本氏から 送られてきた。
(その出会いと その後ついては また後日書こう)
木本さんが、大谷機械の副社長さんに ハナの事を 話してくださった。
更に その副社長さんが 埼玉のY工業に話してくださり。
Y工業の工場長さんも ハナに会いに来てくれた。
私はハナのもたらす そうそうたる登場人物に ポカーンとしていた。
木本さん達から、 副社長さんも ハナを気にかけてくれてることを聞いていた。
ハナは自分の退路を確保してから体調不良になったのか?
それならハナの敷いたレールに乗ろう。 それが最後の切り札だった。
木本さんから大谷機械の副社長さんにハナの不調を伝えていただく。
電話で自己紹介もそこそこに ハナの症状を伝えると
「スイッチの反対側のレバーをな...」 と説明していただく。
更に誰か見に行かせよう。 と言って下さった。
しばらく後 「明日どうですか?」 と電話が来た、 その速さと対応に大恐縮。
でも その救いの手は離せない。
工房でハナのスイッチを入れ、スイッチ反対側のレバー をあちこち切り替えてみる。
ちょこっと試打ち。
あれ!? 動ける!!
真っ青。 直ったって喜ぶべきなのに “(ノ><)ノ
直ったって言葉すら適用してよいのやら (」゜□゜)」
あ・し・た 大谷機械さん来ちゃうよ!!
ハナどっか壊れて~ "(ノ><)ノ
いやいや 正直に連絡する。
「あのぉ。教えていただいた通りにしたら、 復活してしまいました。」
苦笑しながらも副社長さんは
「まぁこれもご縁でしょう。一度見といた方があなたも安心するでしょう。
明日スペシャリスト行かせるから。」
ハナちゃん僕達 狼少年になっちゃったね~。
ハナちゃん明日までに どっか壊れてよ!!
そんな都合の良いことは起こらず、ハナはH氏から
「いいね~いいよ」 というお言葉まで いただいてしまったのだ。
とりあえず見てみましょう。
「あ~、ここ欠けてますね。 直しましょう。」
ハナよ...。
君はけなげですね...。
分解開始。
45歳のハナは 分解が容易じゃない。
後塗りされた 厚塗りの塗装や 油まみれのホコリが固まってしまっている。
ふ~む コイツを外すには反対側も絡むのか。
やはりサッパリチンプンカンプン!!
時々 電源いれながら あれこれチェックしつつ 分解していく。
私はポカーンとアホ面だけど Hさんにはハナの声が届いてるんだろうな。
「大切にされてきた 機械ですね。 45年と聞いていたからもっとボロボロを想像してましたよ。
そして大切に使っていますね。」
「機械音痴なので せめても掃除と油だけは絶やさないことにしています。」
「このエアーハンマーなら大丈夫毎日たくさん使ってあげて下さい。」
尋ねようと思っていたことをあれこれ聞いてみる。
でもね、 ハナの声の方がダイレクトにHさんに伝わっているようで
質問達が 愚問に思えて蒸発してしまった。
部品を溶接して修理し 再び組み上げ完了☆
ハナの動きにメリハリが出た。これが正常な動きですよ。
しばらく試し打ち。な~んともシャッキリ!!
今までと違いすごくきちんと制御された、動きをしてる。
Hさんが 副社長さんに 修理終了を報告する。
ついでに私に携帯を渡してくれた。
「ありがとうございます!!」
「良かったね。 世間はそう悪い人ばかりじゃないでしょう。
あなたは一人じゃないんですよ。
木本さんや みんなに守られ支えられてるんですよ。」
ちょうど工房の相方が 卒業していった時期で
一人だなぁ~...。と思っていた私に大阪から暖かさが届いた。
気にかけてくれた人が居なかったら
大谷機械製作所さんから スペシャリストが来るなんてありえないし。
みなさま本当に本当に ありがとうございました
狼少年事件は とっても反省なのだけど、 一人じゃない勇気と
ハナに デッカイデッカイ太鼓判をいただいた。
そして、いつも頼りにしてしまう、 山梨時代の先輩と元親方にも感謝。
やっぱり、展示会終わったらきちんとハナと向き合おう。
一度シリンダー抜いてみよう!!
大谷機械製作所 http://www.otani-machinery.com/